築地で TV を捨てるけもの。

 この仕事をするきっかけとなったのは TV 誌の編集部のアルバイト。その後、フリーのライターとして TV 局から仕事をいただき、今思えばバブルの名残のような高額なギャランティをいただいていました。が、TV 番組の制作現場の独特な雰囲気が嫌で、紙媒体に仕事の場を移す事に。もっと器用に振舞えれば、今頃、そこそこ名の売れた構成作家になっていたかもしれませんね。

 新聞の連載記事や数冊の単行本出版など、多くの人の協力でたくさんのチャンスをいただき、一般的な同業者が体験できない充足感を得る事ができました。映像よりもギャランティのベースが低い紙媒体を主戦場とした事自体、間違った選択をしたとは思っていませんが、現在に至るまで、嫌で辞めたはずの TV をテーマにした雑誌が仕事の中心になってしまっているのも事実。そのせいか、5 年ほど前から、目を瞑ると荒野に一人でいるような寂しさを感じ続けています。

 そんな訳で、ここ何年かは仕事のペースが落ちたまま。ただ、酷使していないお陰で、時を刻むかのように脈打つ脳漿の、爛々とした輝きは、未だ陰る気配すらありません。きっと、おそらく、うううん、多分? この十指で再び何か生み出せるはず。

 大好きな競馬の神さまがいます。まだ 20 世紀だった頃、初めてネットを繋いで、した事が、神さまにメールを送る事でした。幸運にも返事をいただき、その時の喜びと心地よい緊張は、未だに忘れられません。その競馬の神さまが、思うところがあって TV を捨てるそうです。うん、一緒にウチのポンコツ 14 インチも捨ててくれれば良いのに。