北方謙三の歴史物。

 数年前まで、途中まで読んでいた北方謙三の「水滸伝」を、区内の図書館 3 館を回り、すべて借りてきて読了しました。北方謙三の中国歴史物は、ファンも多ければ、同じ数だけ批判も多い事で有名。その攻撃の矛先の多くは、北方色が強く出てしまっている点です。従来の歴史物の小説に慣れ親しんだ方には、もうそれだけで違和感を覚えてしまうのかもしれません。本書もしかりで、どこを切っても北方飴の水滸伝となっています。

 ただ、個人的な感想としては、水滸伝という原典を 1 度編年体に再編集し物語化していくという作業に、ただただ感服。元々が仮想史的な物語なのですから、作者の色が強く出ていても、違和感を感じる事はありません。それよりも何よりも、おそらく現在出版中の日本語で記された水滸伝の中では、一番読み易く、かつ楽しい物語だと思いますので、歴史ファンはもとより、水滸伝をご存じない方も、是非どうぞ。とても入りやすい入門編になる事と思います。文庫化は進んでいるものの、全巻そろうのはまだまだ先。ハードカバーで 19 冊もあるので、本屋さんに行くよりも、お近くの図書館で探してみる事をお勧めします。